第23回は、2022年11月5日(土)夜8時~ zoomで開催します(※毎月第1土曜日の20時からになります)。
第23回のテーマは「岩崎武雄の『東大最終講義』」です。
なぜ、この東大最終講義を取り上げるかというと、創価学会の教学というか、池田先生の思想は、岩崎武雄の哲学体系によって、基礎づけることができるのではないかと思ってきたからです。
前回、日蓮大聖人の主著・『立正安国論』と法然の主著・『選択本願念仏宗』を対比して、大聖人は「立正」主義、つなわち宗教には高低浅深があり、文証・理証・現証で判別できるという主知主義、価値の絶対論なのに対して、法然は「選択」主義、つまり、「私はこれが好き」「私はこれに賭ける」という反知性主義、価値の相対論であると述べましたが、岩崎武雄は、大聖人が法然の念仏を「一凶」と糾弾したのと同様、「価値の相対主義」を徹底して、排除すべきことを説きました。
岩崎武雄が、「絶対的な価値」として置いたのが、「人間の生の尊重」という原理です。
「一人一人の人間のかけがえのなさ、かけがえのない尊さというものを尊重する」「自己を捨ててでも他人の生の尊重という原則に従って行為する」ということでした。
これは、今年4月の第16回教学研究会で学んだ「不軽菩薩」の二十四文字の法華経、すなわち「我深敬汝等、不敢軽慢。所以者何。汝等皆行菩薩道、当得作仏」(単行礼拝)そのものであると言えるのではないかと思うのです。
法華経が万人成仏の経典、すべての人の生命に絶対的価値を置く教えてあることは論を待ちませんが、「人間の生の尊厳」に絶対的価値を置くところから、憲法の基本的人権、平和主義が基礎づけられ、刑法や民法、さらに政治の実現すべき目標(福祉国家の建設、平和の維持、自由の保障としての議会制民主主義)も定まると岩崎武雄は言います。
この議会制民主主義は、多数決によって事を決する制度ですが、この多数決という形式的な原理に、できるだけいい内容を入れていかなければならないといい、それは、投票を行い、みずから政治に参加するわれわれの責任の問題だと強調する。
その意味で、政治の問題を解決する最後の基礎として、「国民の教育」の問題が出てくると述べ、価値の相対主義に陥らず、すべての人が本当に正しい価値観を求めて探求するという「知に対する愛(=フィロソフィ、哲学)」が何にもまして重要であると述べ、最終講義を結んでいます。
人間の生の尊重(思想(心)の自由→言論(口)の自由→行動(身)の自由)→法律(憲法→刑法→民法)→政治(福祉国家の建設→平和の維持→議会制民主主義)→教育という流れで、根本の生命尊厳の思想が、具体的に内実を伴ってくる過程を明晰に可視化してくれているという意味で、この岩崎武雄の最終講義は、学会員必読の文献だと思います。